一度はローマによって消滅させられたカルタゴは、それから100年後ローマ帝国の植民都市として再建されます。北はスコットランドから南はサハラ砂漠、東はユーフラテス河から西は大西洋にいたる広大な領土を治めた全盛期のローマ帝国で、カルタゴは、ローマ、アレクサンドリアに次ぐ帝国第三の都市にまで発展し、再び繁栄の時代を迎えます。
ポエニ戦争により徹底的に破壊されたカルタゴの都市は、ローマ帝国の街として生まれ変わり、カルタゴの人々は、ローマの美術とカルタゴの伝統を融合した独自の文化を築き上げました。ローマ建築の床や壁を彩ったモザイクはまさにそのことを物語っています。
本章では、厳選されたローマ時代の美術作品とカルタゴで花開いた芸術・モザイクを紹介します。
ヴィーナス頭部像
2‐3世紀
頭部しか残されていないが、裸身の女神が立ち上がり入浴しようとする姿をかたどった、ローマ時代に大変人気のあったタイプのヴィーナス像と推定できる。レプティス・マグナ(現リビア)にあるハドリアヌス浴場から非常に類似した作例が見つかっている。
ライオン像
2世紀
長81cm 幅27cm 高36cm
ふさふさしたタテガミや見開かれた切れ長の眼が実に精巧に彫られており、本展に出品されているローマ時代の彫像の中でも、特に洗練されたローマ彫刻の一つである。ライオンは、死の化身であり、終末論的価値を想起させ、霊廟の聖性と荘厳さを支える象徴的なものであった。
地中海の島々と都市
3‐4世紀
縦533‐536cm 横492cm
1995年、チュニジア西部・ハイドラ遺跡の一般家屋跡から発見された作品である。キプロス、クニドス、ロドスなど古代地中海の12の都市や島々が描かれており、家屋の住民が自身の旅を記録したものなのか、あるいはまだ見ぬ地中海への旅を夢見て描いたものなのか、その目的は謎である。このような島々の古代名が記されたモザイクは、この作品を他には世界に残されておらず、世界初公開となる。
バラのつぼみを撒く女性
5世紀
縦190cm 横140cm
チュニス近郊シディ・グリブで発見された私邸の浴場の床を飾っていたモザイクの一部である。バラ園を背景に展開され、片方を前に出したその姿は、踊る身振りを示している。その形姿、半裸像、バラによって、愛と美の女神ヴィーナスとの関連性が指摘される。
メドゥーサ
3世紀
縦90cm 横89cm
覗き込む者を石にしてしまう邪悪な眼と逆立った蛇の頭髪をもつメドゥーサのモザイク。ギリシア神話にヒントを得た作品であるが、時代とともに物語に登場するメドゥーサの伝説も変化していく。本来は地母神的性格を持ち、豊饒と厄除けを願って描かれたメドゥーサ像は、北アフリカでは非常に好まれたモチーフの一つである。


