地中海は古代世界の中心でした。エジプト、ギリシア、ローマそれぞれの風土に培われた文化や美術の様式が、人の行き来や貿易によって各地にもたらされ、その土地の固有の文化と融合し、新たな様式が生み出されてきました。カルタゴから出土した作品は往時の繁栄を物語ると共に、まさにそれぞれの文明が影響しあいながら文化を育んできたことを明らかにします。
本章では、古代地中海の世界を概観すると共に、海上で広範囲に活躍した海洋国家カルタゴの繁栄を展観します。建国から名将・ハンニバルで有名なポエニ戦争による滅亡まで、カルタゴの歩んだ軌跡に思いを馳せます。
マスク
前3‐前2世紀
高50cm 幅41cm 奥行17cm
独創的な表情をしたマスク。カルタゴの墳墓から多数出土している。墓室の壁や戸口にかけられ、儀式の場面で使用された可能性もある。恐ろしい形相をしたマスクは、悪霊を退散させ、様々の邪悪な力から死者を守る魔よけの効能があったのであろう。
マスク形ペンダント
前4-前3世紀
高3cm前後
人物の頭部をかたどった色鮮やかなガラス製の小さなマスク形ペンダント。マスクには悪しき力に抗する魔力があったとされ、お守りとして首から下げるための装飾品であった。ガラス製造の起源は、オリエントにさかのぼれるが、カルタゴのガラス工芸は、卓越したガラス職人の技によって、抜きん出たものとなっている。
有翼女性神官の石棺
前3世紀
長197cm 幅68cm 高76cm
カルタゴのネクロポリスから出土した大理石製の石棺。棺の形式はエジプト型、傾斜の鋭い屋根形をした蓋はギリシア様式のものである。そして横に臥した女性神官の像は、エジプトのかぶりものを身につけ、エジプトの女神イシスやネフティスのイメージを想起させる人物像である。まさにフェニキア、ギリシア、エジプトの文化の融合を示し、数多くの芸術的潮流に着想を得た、古代地中海美術の結晶である。
ネックレス
前6世紀
長28cm 径8cm
紀元前7~6世紀の地中海世界の墳墓からは、金属細工の美しい製品が多数出土している。花模様の装飾が施された金のメダリオン、ホルス(天空と太陽の神)の目、古代エジプト文字の刻まれたスカラベなどからなるこのネックレスは、女性のお守りとして使われていた。
鎧
前3‐前2世紀
高(胸当て)30cm (背当て)31cm 幅28cm
胸当てと背当ての対からなる鎧である。中央には兜をかぶった女神ミネルヴァが打ち出されている。このような心臓を保護するタイプの鎧はカンパニアで多く作られた。カルタゴの名将・ハンニバルの雇い兵が使用したものとも言われている。


